【講演タイトル・概要】
基調講演:熱硬化性高分子の構造・物性研究における分子動力学シミュレーションの活用
エポキシ硬化物は熱硬化性高分子であり、接着剤や構造材料として広く用いられる。本講演では、エポキシ化合物とアミン化合物の硬化反応による三次元ネットワーク構造形成、硬化物の凝集状態、また、異種固体界面近傍での凝集状態について実験でわかることを解説した後、分からない部分への分子動力学シミュレーションの活用について演者らの成果を紹介する。
【略歴】
1993年九州大学工学部卒、1997年同大学院博士後期課程修了、ウィスコンシン大学マジソン校博士研究員、日本学術振興会特別研究員を経て、2000年九州大学大学院工学研究院助手、2009年同教授、2018年科学技術振興機構プログラムマネージャー、2019年九州大学次世代接着技術研究センター長、2021年九州大学主幹教授
【講演タイトル・概要】
DMol3 を用いた自動車排ガス浄化触媒の解析事例
いわゆるマルチスケールフィジックスの考え方に習い、自動車排ガス浄化触媒の活性を予測した事例を紹介する。具体的には排ガス浄化反応を詳細化学反応で表現し、各反応の活性化エネルギーをDmol3 で求め、その値を市販の化学反応解析プログラムに投入することで、第一原理的にマクロな触媒活性を予測した事例を紹介する。
【略歴】
2008年 名古屋大学大学院 量子工学専攻 修了
同年 スズキ株式会社 入社
2021年 静岡大学創造科学技術大学院にて論文により博士(工学)の学位取得
【講演タイトル・概要】
三菱ケミカルR&D のDX 構想における電子実験ノート活用
三菱ケミカルは2017 年4 月に三菱系の素材3 社が統合して発足した会社である。製品や技術プラットフォームは多
岐にわたり、研究開発も多様性に富んでいるが、業務の属人化というリスクも抱えている。属人的な知見をいかに
形式知にするか、表出化させるか。電子実験ノートを通して『研究者としての思考様式』も伝承できればと考え、電
子実験ノートの導入を開始した。道半ばではあるが、三菱ケミカルにおける電子実験ノート活用の構想等を紹介する。
【略歴】
東京大学大学院(農学生命科学研究科)修士課程修了、三菱レイヨン(現三菱ケミカル)入社、アクリル樹脂設計(熱可塑、熱硬化、光硬化)に関する研究開発業務、研究開発に関する戦略スタッフ業務に従事。
【講演タイトル・概要】
昭和電工における電子実験ノート活用のご紹介
昭和電工では社内資産である実験データの「蓄積」「共有」「活用」のため、2019 年からBIOVIA Notebook を導入し、研究開発拠点への普及に取り組んできた。当社は有機・無機・金属にわたる多彩な事業を展開しており、BIOVIA Notebook に求められる機能、役割も多種多様である。そのため部署毎にヒアリングを行い、活用方法の提案や、Pipeline Pilot 活用による追加機能開発などにより利用者満足を追求し、ユーザの定着を図っている。マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を進める上でボトルネックとなるデータ収集・データ整形の効率化(データパイプライン)や、報告書作成の省力化(自動レポーティング)など、BIOVIA Notebook の利用価値向上に繋がった取り組みについて紹介する。
【略歴】
ソフトウェア開発企業の勤務を経て昭和電工では、自然言語処理を使った文書検索、AI技術を活用した手書き文書検索システムの開発・運用など、技術継承のための技術情報検索・活用システムの構築に従事してきた。2019年よりBIOVIA Notebookの社内適用に携わり、ユーザへの教育や活用方法の提案、Pipeline Pilotによる追加機能開発を行っている。
立教大学理学部化学科卒業後、東京農工大学大学院生物システム応用科学府 生物機能システム科学専攻(無機材料工学)にて修士課程を修了。
2009年より内資大手システムインテグレータにて研究開発向けシステムの販売・導入を担当後、2018年 ダッソー・システムズ株式会社に入社。
化学・材料業界を対象とした研究業務デジタル化に関わる製品を担当。
【講演タイトル・概要】
環境に優しい晶析プロセスの効率的な開発のためのインシリコ溶媒選択
バッチ晶析は、特殊化学品業界や医薬品業界において、精製や成形のために最も広く用いられている方法の一つである。環境に優しい溶媒(グリーンソルベント)を取り入れて晶析プロセスを最適化することは、持続可能な未来のための化学技術を開発する上で必要不可欠なマイルストーンとなる。本研究では、収率、安全性、安定性、溶媒回収の問題から、新しい特殊化学物質の冷却晶析プロセスにおける既存の混合溶媒の代替を目指す。新しいグリーンソルベントを発見するためのスクリーニング手順は、計算と実験の複合的なアプローチに基づいている。COSMO-RS 法を用いて多数の溶解度曲線を計算し、Matlab によるスクリーニングを行い、その後、選択した溶解度データの実験的検証を行った。また、最終的な晶析プロセスの最適化は、統計的実験計画法 (DoE) により行われた。この一連の手順により、問題のある溶媒系の代替に成功し、晶析プロセスの簡略化と製品品質の向上を実現した。